2015.05.17
スケートボードシューズの進化④ 新ブランドの台頭 DC SHOES特集 前編
DCの長きに渡る歴史を語る上で外せないアーカイブとプロダクトが並ぶ。
『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
90年代後半のシューズテクノロジー
さて、現在のハイテクスニーカーの基盤になったと言っても過言ではない90年代後半に掛けてのシューズテクノロジーの進化をスケートシューズの中から覗いてみよう。当時は、各社がこぞってテクノロジーの粋を集めたモデル、新技術を投入していた事は前の記事でも触れました。あの、シンプルなバルカソールをブランドの顔にしていた〈VANS〉でさえも、ハイテクノリなモデルを多数リリースしていたくらいですから。
この時代のテクノロジーの特徴としては、比較的固いと言われていたカップソールのシューズでも、箱から出した瞬間からソールが柔らかく、数週間の普段履きをして靴を柔らかく馴染ませる時間を必要とせずに、すぐにスケートが出来るようなソールの登場や、ミッドソールへのエア搭載はモチロン、中には空気より軽いヘリウムを注入しクッション性能を確保したモデル、トリックによるシューレースの破損対策を徹底的に研究したモデルなど、それは多くのアイディアや技術が惜しみなく注がれたモデルがリリースされ始めました。
『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©
左『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
DANNY WAY SHOES | Photograph by Mike Blabac
右『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
DANNY WAY,HELI JUMP | Photograph by Luke Ogden
そんな中、鮮烈な印象を受けたのが〈DC SHOES®〉の存在でした。いまではブランド設立20年目を迎えた老舗ブランドに成長しました。今回はスケートフォトグラファーとしてDCの歴史を記録してきた、マイク・ブラバックがキュレーションを務め、自身の写真とともにDCの歴史をまとめた『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©に掲載された歴史的な写真や過去のメディア掲載物などからDCの歴史に触れてみよう。
ちなみに全くの余談ですが、自分がスケートボード復活に際してチョイスしたのもリック・ハワードのシグネチャー「HOWARD2」だったり、当時爆発的に人気のあった「LYNX」でした。〈DC〉の存在を知った時に、メディアを賑わす多くのスケーターが〈DC〉のライダーとして活躍しており、ショップで迷わず手に取った記憶があります。
Rick Howard DC Commercial – 1999
DC SHOESの誕生
そんな〈DC〉を知らない人もいるかもしれないので、歴史を簡単に紐解いてみたいと思います。
1989年当時、大学で建築デザインを学んでいた学生だった、ケン・ブロック(現DC AUTO TEAM)が、カリフォルニア州サンディエゴで、スケーター用のTシャツブランド〈Eightball clothing〉を設立。その後、プロスケーター、ダニー・ウェイの兄で、頭部のケガによってプロへの道を断たれたデイモン・ウェイと知り合うのが1991年。翌年には共同で新たなクロージングブランド〈Droors Clothing〉を設立した事が〈DC〉のルーツでした。そこからアパレルブランドの運営に加え雑誌メディアの立ち上げや、スケートショップの運営を束ねるために組織はどんどん大きくなり、遂にはシューズビジネスに着手、〈Droors Clothing Shoes〉を設立します。
1994年に1stモデルを制作するも本格的な量産は生産拠点を移した翌年の1994~1995年シーズンに入ってからで、ダニー・ウェイのシグニチャーモデル、ついでプロスケーター、コリン・マッケイのモデルを発表しました。シューズブランド設立とほぼ同時期に設立したDCチームには、その後もロブ・デュディック、ルディ・ジョンソン、マイク・キャロル、リック・ハワードなどの当時のメディアを賑わせていたライダーがこぞって加入。その後も数々のトップスケーターを加入させシグネチャーをリリース。中でも注目したいのは、97年に加入したジョッシュ・キャリスで、今現在でもDCチームに所属するレジェンドスケーターとして活躍、人気を博しています。
スケートボード界の歴史の中で、今でも燦然と光り輝くDCチームライダーの功績は、スケートボード業界以外へも大きな影響力がありました。1996年にはUS THRASHER MAGAZINEで年間広告大賞を受賞し、スケートシーンでその地位と存在感を確立します。ケン・ブロックとロブ・デュディックの発案による『プロテクティブレースループ』を搭載した『デュディック1』は、スケートシューズが持つ大きな課題であったレースバーンアウト(靴ひもの擦り切れ)を解決した初のスケートシューズとして話題を呼んだ。1997年にはダニー・ウェイがバーティカルエアーで、ギネスレコードとなる16フィート6インチ(24メートル07センチ)を記録。ついで中国の世界遺産、万里の長城をスケートボードで飛び越えるという前人未到の記録も残している。こういった彼の記録への挑戦が、現在、アメリカのX-GAMESで人気を博しているメガランプの確立へと繋がっていきます。
アメリカのXGAMESのサイトで、常に記録に挑戦してきたダニー・ウェイのドキュメンタリーが公開されています。旧友である、ロドニーミューレンやライアン・シャクラーとともに自身も当時を振り返ってコメントをしています。
『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
GREAT WALL OF CHINA | Photograph by Mike Blabac
その後は、モトクロスチームやサーフチーム、スノーチームの設立、スノーボードブーツでは革新的なモデルを多々輩出し、一時代を築きました。
『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
LOVE PARK CREW | Photograph by Mike Blabac
『DEFYCONVENTION』20 YEARS OF DC IN PHOTOGRAPHS©より
KEN BLOCK,GYMKHANA 5 | Photograph by Mike Blabac
とにかく、90年代のDCには凄まじい勢いとシーンへの先見性がありました。
DC特集、続編へ続く。
■DC SHOES公式サイト : https://www.dcshoes.jp/