2016.04.22
ナイキ エア プレスト誕生秘話
-「ナイキ エア プレスト」って何?
ご存知の方も多いとは思うが、『ナイキ エア プレスト』は2000年に〈ナイキ〉から登場したランニングシューズだ。 S.M.L…といった、スニーカーには珍しい斬新なサイズ展開で注目を集め、革新的なフィット感と履き心地は多くのファンを虜にした。 一度履いたら病み付きになる『ナイキ エア プレスト』が誕生するまでには、どうやら長い歴史があったようだ。
-最初期のプロトタイプは韓国で生まれた?
韓国に駐在していたフットウェア開発担当の”トビー・ハットフィールド”は当時を思い返す。
1996年に発売された、現在の『エア プレスト』のプロトタイプとなるシューズを履いて立ち上がると、足首の周りの形が崩れて広がってしまったそうだ。 決して完璧とは言えないフィットを実感した時、ハットフィールドは、”足とシューズが喧嘩するようではいけない。つまりフィットがとても大事である。” ”スリッパのように快適なシューズが欲しい。”という一般ランナーからの2つの意見を思い出した。 これまでにない優れたフィット感と快適さを提供するシューズのデザインに取り組むきっかけとなったのが、この時だ。
-革命的なかかとのVノッチ
最初に生まれたアイデアは、足首の後ろの部分にV字の切れ目を入れてフィットを高めた”Vノッチ”。 ”Vノッチ”によってかかとのフィットは改善され、さらに履き口部分にかかるテンションが抑えられつつ、ちょうつがいのように広がるためのシューズの長さを伸ばすことにもなったのだ。 この発見によってフットウェアのサイズ展開に革命が起き、Tシャツのようなゆとりのあるサイズ展開が誕生した。
その後、ハットフィールドのアイデアが落とし込まれた新作が登場。 ハットフィールドの成果が初めて市場に現れたのは、1998年に発売された『ナイキ エア ガントレット』だった。 翌年の1999年には、エリートランナー向けに提供するために開発された『ナイキ エア ズーム ドライブ』が登場。 履き口部分は従来のシューズの形に近いものだったが、内側の構造をシームレスに近付け、アッパーには伸縮性のあるメッシュを採用した。
そして2000年、1996年に韓国で生まれた『エア プレスト』のコンセプトが初めて現実の形となり、『ナイキ エア プレスト』が発売されたのだ。 アッパー素材には、通気性に優れた医療用スペーサーメッシュが採用され、通気性と伸縮性を兼ね備えた理想的なアッパーが完成した。 ちなみに『エア プレスト』という名前は、2000年の完成以後、300を超す応募の中から選ばれた”プレストマジック”からとっており、”マジシャンが「プレスト(さぁ!)」という掛け声と共にマジックを見せたかのように完璧なフィットを感じられる”ということに由来しているそうだ。
発売から16年間、エリートランナーからの高い支持と、熱狂的なファンを持つ『ナイキ エア プレスト』。
スニーカーカルチャーに新しい波をもたらした〈ナイキ〉の名作は、いかにフィットを高めるかという発想から生まれた、ハットフィールドの意地とプライドが詰まった一足だった。