2015.03.31
NIKE AIR MAX ZERO [ナイキ エア マックス ゼロ]
“お蔵入り” という言葉がある。企画されたものの、日の目を見ることなく、そのままになることで、映画業界などではよく聞く言葉だが、これはどの業界にも存在する。スポーツシューズ業界で “お蔵入り” という言葉で最も有名なのは〈ニューバランス〉の「M1400」。このシューズのソールユニットの製造は、当時の技術レベルではサンプル程度なら可能であったが、量産化は不可能ということで一度は “お蔵入り” となり、「M1300」の後継モデルは1989年にリリースされた「M1500」となった。しかしながら大きめの “N” ロゴを求める日本市場の要望に応えるかたちで1992年に技術的な困難を克服して「M1400」がリリースされたのである。
実は「エア マックス 1」の誕生までに、〈ナイキ>の天才デザイナーであるティンカー・ハットフィールドは複数のデザインを起こしており、そのなかの一枚が「エア マックス 1」として製品化されたが、最近になって採用されなかったデザインスケッチ、すなわち “お蔵入り” したスケッチが発掘され、その先進性に注目が集まった。そして、そのデザインを現代の最新テクノロジーと組み合わせることで、1足のシューズが完成している。それが「エア マックス ゼロ」である。
デザイナーのグレアム・マクミランは、当時の技術では実現できなかったヒールストラップのアイディアなどを現代の生産技術で実現。ソールユニットには「エア マックス 1 ウルトラ モワレ」と同じ、ファイロンマテリアルを使用したニューデザインを与えるなど、このシューズに現代の高いレベルの機能性を与えることに成功。一度は “お蔵入り” したデザインが30年近いときを経て見事に蘇っている。