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2015.04.9

スケートボードシューズの進化②

シグネチャーモデル

 

90年代後半から現在までのスケシューの流れをまとめる前に、その過程で生まれた”シグネチャーモデル”について少し触れてみようと思う。シグネチャーモデルとは、偉大なプレーヤーの功績を讃え、その愛用モデルに名前を冠したり、契約選手が監修するなどしたシューズの総称である。

 

1960年代から70年代にかけて活躍した、テニスプレーヤーのスタンスミスは、愛用していたテニスシューズに元々付けられていたモデル名を自身の名前に変更し、自身の肖像画をシュータンにプリントされる程の影響力を持った人物だった。ちなみにギネスブック上では、世界で一番の販売数を誇るスニーカーは「スタンスミス」になっているらしい。

 

さらに1917年に発売された〈CONVERSE〉「オールスター」を愛用していたバスケットボール選手のチャック・テイラーは、細部の改良案を進言したり販売促進に関わるなど、その功績から自身の名前がヒールパッチに記載されるまでになっている。そして、現在も進化・モデルチェンジを続けながらリリースされているモデルを例に挙げるなら、ご存知、NBAのリビングレジェンド、マイケル・ジョーダンのシグネチャーである〈NIKE〉 「エア・ジョーダン」シリーズ。ジョーダンが現役を退いた今でもアップデートを繰り返してリリースされているあたりからも、その不動の人気が見て取れる。

SMITH

「スタンスミス」

 

CHUCK

 チャック・テイラー

JORDAN29

「ジョーダン XX9」

 

スケートボードシューズのシグネチャーモデル

 

さて、スケートボードシューズのシグネチャーモデルについて話を戻そう。スケシューでは、<VANS>のローカットキャンバス・スニーカー「オーセンティック」をベースにしつつ、当時〈VANS〉のライダーであったトニー・アルバやステイシー・ペラルタらのアドバイスをもとにアレンジして「エラ」が誕生した。しかしその当時は、まだシグネチャーモデルとしてリリースされる事はなかった。

 

僕は当時リアルに実物を履く事はなかったけど、1986年か87年に〈Etnies〉から発売された「ナタス」がこの世で初めてのスケート シグネチャーモデルとしてスケーターには認知されている。この出来事は、現在のスケートシューズやシグネチャー文化の礎を築いた大きな功績だったように思う。

モデルとなったナタス・カウパスは当時、サンタクルーズのビデオなんかで活躍したプロスケーターで、みんな大好きなマーク・ゴンザレスと同時期に今のストリートスケートの基礎を築いた偉大なスケーターの一人。<Etnies>は1986年、当時フリースタイル スケートボードの世界チャンピオンだったフランス人スケーターのピエール・アンドレが、 世界で初めて『スケーターによるスケートシューズ・カンパニー』として設立したシューズブランドで、今でもスケーターから厚い支持を得ている。

NATAS2

NATAS

その後もこの〈Etnies〉からは、サル・バービアのシグネチャーモデルが1995年に発売されだが、その人気などから現在に至るまで何度か復刻もされてきた。

SAL1

SAL2

 

VANSのハーフキャブ

 

スケートシューズ、そしてファッション的な視点などを含めた広義的な視点から観て、現在スケシューのシグネチャーとして広く認知されているのは<VANS>の「ハーフキャブ」あたりなのかなって個人的には思っている。

1985年に〈VANS〉からBMXやマウンテンバイク用として発売された「マウンテン・エディション(Mt.Edt)」をベースに、スティーブ・キャバレロのシグネチャーモデル「キャバレロ」が’80年代後半にリリースされたが、当時ハイカットスニーカーをミッドカットにハサミでカットオフし、ダクトテープで補強・カスタムするスケーターが続出した。この事を受け、1992年にミッドカットの「キャバレロ」として「ハーフキャブ」が産まれた。この靴のモデル名が、『半分にカットする』事と、キャバレロが編み出した「ハーフキャブ」というスケートボード トリックのダブルミーニングから命名された事はスケーターには有名な話。

CAB2

「キャバレロ」

HALFCAB

「ハーフキャブ」

 

数年前に「ハーフキャブ」の発売20周年を記念して限定20足のスペシャルモデルが〈SUPREME〉からリリースされたことを覚えてる人も少なくないと思う。スティーブ・キャバレロ自身が、実際に当時と同様のハンドメイドによって「キャバレロ」をカスタムした「ハーフキャブ」だ。

 

 

Vans Half Cab 20 Supreme Edition from Vans OffTheWall.TV on Vimeo.

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CAB7

’90年代中頃になると、シグネチャーシューズが定着し浸透。トッププロとして活躍したスケーターがシューズブランドを起業したり、ビッグカンパニーから独立するといった細分化の動きが加速する時代を迎える。それらを含め’90年代には新しいスケートシューズカンパニーが多数登場し、新たなスケシューの概念を産み出す事へと繋がっていくのである。

関連:スケートボードシューズの進化①

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